MSX“マスク狂時代”
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マスク狂時代バトルが完成するまでの熱いドラマ?!
マスク狂開発秘話
全ての始まり

 そう、それは1993年中のことではなかったかな。
私の家にARSさんが遊びに来ていた日のこと。こんなゲームがあったらいいな、などという話をしていた。いつものごとく話は妙な方向へ進んでいき、変なゲームを色々考えたような記憶がある。実際にゲームを作ることを考えていたというより、その場で笑えるネタを考えていたという感じだ。結局は、サザエさんのキャラクタの格闘ゲームがあったら笑えるという話になったのだ。猫のタマが炎を吐いたりするなど、インパクトを狙ったおバカなゲームの構想だった。著作権の関係上、キャラクタの名前を実名ではなく、ザサエ、ガヅオ、津波平、ボート(船)にするなんてこともまで考えていたのだ。ちょっとMSXじゃ速度とかの問題でダメじゃないかなぁ…なんて話で終わっちゃったかな。


苦悩の数日間

 何気なく本気だったのだろうか。数日間サザエさんの格闘ゲームが気になっていた。いつの間にか完成させてみんなを笑わせてやる!なんて気持ちが大きかったかな。どうもそういう性格は今も直らず…。それにしてもMSXで格闘ゲームというのは技術的にも能力的にも困難であると思った。う〜ん、ちょっと無理かなぁ…。しかしその時、脳裏に何かが見え始めたのだ。そうだ、これならMSXでも動かせるぞ!


数日後のこと

 あれから数日後、今度は僕の家に、ARSさん、Kazuさん、1匹パンださんが遊びに来ていた。いつものごとく、おバカトークやゲームやらを楽しんでいた。しかし私は覚えている、みんなに「ゲーム作ったよ〜」なんて言っても「そう〜?」という感じで市販ゲームに夢中なのだ。あれれ、全然興味なさそうじゃん…。
 結局みんなが家に帰ると言い出した時に「ちょっと見てってよ」と、やっとこさMSXを立ち上げゲームを見せた。そう、もうその時点でゲームの8割は完成していたのだ。
 すぐ帰るつもりだった皆さんは、その後2時間ほど私の家に滞在することとなる。新しいゲームの出現とその内容に笑いの渦が巻き起こっていた。出だしは好調だ!


ザサエバトルなのだ!

 開発当時を知らない人はもちろん知らない話だけど「マスク狂時代バトル」の原形は「ザサエバトル」というゲームだった。キャラクターはもちろんサザエさん風だ。他の登場キャラクタも何種類か作りたかったんだけどキャラの数だけアニメーションが倍増されることを考えると、MSXでは辛い作業だと思い没にした。実際そのグラフィックデータをためておける領域がMSXにないのだ。いちいち遅いフロッピーアクセスなんてごめんだ。そんな訳で、体の色でキャラクタを区別することにした。実はキャラクタが1つだったことは個人的に一番悔しかったことなのだ!さてそのキャラクターの名前だが、ザサエ、ザザエ、ササエ、サザこう、の4種類で変更出来なかった。ちなみにサザこうの「こう」は「工業」の「工」の字で「サザ工」となる。おバカだ!
 大急ぎでプログラムもグラフィックも作っていたこともあり、画面はプロトタイプが多かった。実際MSXと言えど全ての作業を1人で手がけるのは辛いのだ。ということでタイトル画面なんかは、も〜のすごい綺麗な(?笑)画面だったのだ。

ちなみにこのころのものをザサエバトル1としてダウンロードのページで公開しています。マスク狂マニアな方はどうぞ。(笑)


ザサエ1タイトル
(ザサエ1タイトル画面)
ザサエバトル1タイトル画面

 一応マウスで描いたような気がするがかなりいい加減である。(ご覧の通り)この画面はプロトタイプのまま、かなり後まで続くこととなった。このキャラクタとサザエさんとの違いは耳の横の髪のコブの数が違うことだ。本物は3つ。

(ザサエバトル初代の戦闘画面)

 このころはまだ効果音だけで音楽は鳴らなかったのだ。下の方に文字のナレーションが入った。しかしゲーム中、読んでいる奴は誰もいない…。爆弾は波平もどきだった。

ザサエ1戦闘画面
(ザサエ1戦闘画面)

更なる苦悩の日々

 それからは家にARSさんや1匹パンださん、Kazuさんが来るたびにザサエバトルをやることになった。それは試験的にやったわけでもなく純粋におもしろいゲームに仕上がって来ていたからだ。そしてその度にこうした方がいいとか色々とアドバイスをもらうこともできたのも幸いで、次回に反映させるよう努力した。ゲームを何度もやっていたおかげでわかりづらいバグも発見できた。また昔からMSXユーザーとしても交流のあるKenさんにディスクを渡すと、嬉しいことにその仲間内でもザサエバトルは流行っていたようだ。皆から色々な意見をいただいき、また自分のセンスもどんどん追加して完成度は上がっていった。経過を少し紹介すると、例えば最初は単なる移動というコマンドがあったのだが闇討ちコマンドがあるのでメリットは無い、ということで廃止した。また防御は最大の攻撃という訳のわからないコマンドもありゲームバランスを考えて止めた。また気付きにくいバグとして、ある条件で永久に壁に激突したりバリアに跳ね返ったりした。その時は爆笑で済んだが…。結局壁もバリアもたまに壊れるようにした。次々と改良を重ねゲームバランスも良く仕上がってきた。そして、そろそろ世に送り出した方が良いのではないかという意見もチラホラ出始めて来ていた。
 
だがしかし、重大な問題があった。BGMがないのだ!


開発の山場

 何が大変だったかというと、ゲーム自体を作ることよりも音楽を鳴らすプログラムを作ることだったのだ。MSXは遅いので全部アセンブラで1ステートの無駄もないようなプログラムを組んだ。レポートは何十枚にもなり、開発にはかなりの日数が必要だった。しかしがんばってみるものだ。いいものが出来上がった。
 当時ミュージックドライバーとして主流だったものはデータをコンパイルすると相対的なコマンドが絶対的に固定されてしまったりデータを置く位置が固定されてしまったりしたのだが、私の作ったものはコンパイル後も都合に合わせてどこにでもデータを置くことが出来たし、相対コマンドもいつでも相対的だった。得にその相対コマンドにはこだわった。テンポにまで相対コマンドを作ったのだ。他のゲームでも使うことが出来るように設計した。マシーンの条件によって再生を異ならせることも出来る。1つのデータの中であってもPSGだけの機種ならこちらを再生するとか、ミュージックドライバーとは全く別のプログラムが設定した変数値によって再生を異ならせるなどの機能も持たせた。もちろん変数を使ったループ再生や条件分岐も出来る。変わり機能ではZ80の6MHzに出来る機種ではPSG音源の音程が上がりFM音源と周波数が異なってしまうのだが、それを修正する機能をつけた。またFM音源のバグ?を利用することで、固定15とオリジナル1しか出ないはずの音色をそれ以上出す機能も搭載した。これらは前代未聞の新機能だ。個人的にもかなり使えるものであった。MSXがあのまま続いていればかなり活用したいものであった!しかし…あぁ、MSX。
 話は変わってゲーム自体のプログラムは9割以上BASICで動いている。そんなことを意識させないような演出のタイミングも考えたつもりである。
 またこの頃、Kenさんに音楽を1曲依頼して採用した。どうもありがとうKenさん!

ちなみにミュージックドライバも公開しているのでマニアな方はゲットしてくださいね。


ザサエ2タイトル
(ザサエ2タイトル画面)

ザサエバトル2タイトル画面

 一応マウスで描いたような気がするがさすがに初代のタイトル画面はボツとなりスッキリとしたさわやかな?画面にになった。なぜかインパクトみたいなものを求めてしまうのだろうか?ザサエの顔色が悪い。でも、それはそれで…いいのでは?

ザサエバトル2も公開中!


ザサエ2隠しタイトル画面

 やらなくても良いものを仕掛けてしまうのがザサエの基本コンセプトでもある。この画面はたまにランダムであらわれるものだ。描き途中であったがSTAFFからの評価は高かった。マスク狂時代にもこういうのを入れたかったが容量が足りず断念。非常に残念である。ちなみに「真」の字はSTAFFの推薦。

ザサエ2隠しタイトル
(ザサエ2隠しタイトル画面)

もう一息!ザサエからマスクへ!

 ミュージックドライバの完成とともに音楽は鳴るようになった。そして曲も同時進行で作った。もう世に送り出しても良い完成度だ。
 しかし世に出すには問題があるのではと言うことになった。なぜならそれはキャラクターがザサエでは著作権上問題では?…ということだ。それではと企画を変えグラフィックも半分書き直した。なぜ半分か?!
 マスカーがスカートをはいているのは御存じであろうか?それはザサエさんがはいていたものなのだ!!マスクのキャラに違和感というものは存在しないので(マスカー自体が違和感?)そのまま進行(笑)。そして投げのアニメーションが派手になったのもこの頃だ。
 あともう一息。STAFFによるテストプレイがくり返され、最終調整が行なわれた。


ついに完成!MSX−FANへ掲載!

 ついに完成した!当時生き残っていたMSXの雑誌はMSX−FANのみであったためMSX−FANに投稿することにした。何となく内容がMSXマガジン向きかなぁと思ったけどすでに無くなっていたのは悔しいことだ。それからしばらくして「雑誌に載ります」との電話があった。わ〜い!!スタッフの皆さんも笑顔。
 そして雑誌の発売を楽しみに待ち、とうとう発売日。いざ誌面を読んでみると無念にも評価はそれほどでもなかった。ゲームが複雑すぎるという意見が編集部で多かったようだ。しかし私は完璧主義なのか送ったマニュアルに全てのパターンを記述したのであれがいけなかったと思い後悔している。もっと簡潔で良かったのだ…。編集部のかきさんはそれをうまくまとめて雑誌に載せてくださった。よく1ページにあれ程まとめられると関心したものだ。かきさんによるとこのゲームは、先行入力型対戦戦略シミュレーションゲームだそうだ。なんともいいネーミングである。すぐに気に入ってしまった。
 だが、何故こんなにも怪しいゲームだと思われてしまったんだろう?う〜ん、やっぱりどう見ても怪しいか!


その後のMファン

 その後、MSX−FANにも何ヶ月かこのゲームのネタがあった。とは言え読者の投稿などであるけれども。好きなゲームの絵を描いて送るコーナーにもマスカーの絵が何回か載っていた。それも他の絵は全て市販ゲームだったので嬉しく思った。マスク狂時代バトルは、ずいぶんと細かく色々なことが起るように作ったので、裏ワザ系の投稿もあり誌面にも載っていた。私としては嬉しいことである。
 しかし、読者投稿のゲームの裏ワザの記事を載せることになるなんて編集部の方々もMSXの終末を薄々と感じていたんではないかと思う。掲載されたことはとても嬉しいけれど、そんな寂しさも感じてしまう。


年間人気投票3位に入る!

 数カ月後、MSX−FANの年間人気投票で3位に入った。いやはや短い期間で3位に入れるなんてとても嬉しかったのだ。おもしろかったのはマスク狂時代と同じ号に載って編集部からの評価が高かったソフトよりもマスク狂時代バトルの方が読者評価が高かったことである。また第1推薦が多くて点数を稼いでいたのも笑えた。だいぶハマっている人もいたようなのだ。(笑)
 編集部での評価とユーザーの評価が違うことについてはうなずける面もある。プログラム投稿コーナーのファンダムの方向性からするとマスク狂時代バトルは異色で完成されすぎていたと思う。完成されすぎていたというのは技術的なことよりもファンダムにあった余裕というものが無かったと思うのだ。読者がプログラムに触れるわけでもなく、ただプレイするのみだった。ファンダムの視点で見れば、ある意味ユーザーから遠いものだったのかも知れない。編集部でのゲームが複雑という理由よりもその点で考えた方が実は正解なのではないかと思っている。ただファンダムの方向性と裏腹にプレイだけ出来ればいいというユーザーもいる訳で(たぶんその方が多い)ゲームをしたい人には支持を受けたのだろう。もちろん他にキャラクタの好き嫌いも関係あると思う。どちらかというと若い世代の方が異色物にウケる確率は高いのだと思う。
 その後マスク狂時代バトルファン?から頂いた手紙などには、ゲーム内容は全然複雑ではないし見れば何が起っているかわかる、という意見が多かったので安心した。

しばらく僕達はマスク狂時代バトルフィーバーでしたけれど、皆さんはどうでしたか?


ホームページにて

 そして数年経ってホームページを開設。このマスク狂ネタでの反響もありました。色々な方がプレイしてくれたことも知ることが出来たし、どんなことを思って遊んでくれたかというヒントも得られました。

 このホームページではプログラムも公開しているのでまた遊んでみてください。当時すでに改造して遊んでいたという、ずとしさんバージョンもあります。ぜひこのゲームを知らない方も挑戦してみてください。

 それから現在主流のパソコン版をぜひ作って〜!って声があります。作ってはみたいんだけどね。いつの日か…。

当時楽しんでくださった方々にもこれを読んでくださっている方々にもとても感謝しています。ありがとう!

よろしければメールや掲示板でご意見してください。お待ちしています。


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