ある日、私は竪山さん(仮名)とコアラさんの家に遊びに行っていた。楽しい時を過ごしていた私たちは、いつの間にか夜が更けていることに気づいた。さぁそろそろ帰らねば。
この話はそんな帰り道に起こった1分程度の出来事だ。
帰り道、私と堅山さんはいつものことながら、くだらない話に花を咲かせていたのだった。話はだんだんと盛り上がり、私たちは浮かれて良い気分だった。
そのときだ。私たちの楽しい会話は一瞬にして脳から蒸発した。沈黙が私たちを襲う。2人の視線は同じものに注がれていた…。
30メートル程前方に、頭が銀色に光る、少し背の高い、人間型の生物がいるのだ。ヒョコヒョコと不自然な足取りで道路を横切っている。
「とうとう逢ってしまった…」私は確信した。
そしてこの事態の重大さを半ば無意識に感じ取った。1本道なのだ。私たちに逃げ場はない。
その時、道路を横切っていた“彼”は、急にクルリと90°身体を回転させると、私たちの方へ向かって歩き出したのだ。肩をすくめたような不自然な格好でヒョコヒョコ歩いてくるのだ。
「マズイ!」私はそう感じた。私の身体は緊張で硬直している。おそらく堅山さんもそうに違いない。
私たちの自転車は吸い込まれるかのように慣性で進んでいった。接触してしまう…。
ニアミス!
「目を合わせてはいけない!」私は思った。だが、すれ違いざまにチラッと“彼”の顔を見てしまった。…目が赤と緑に光っている!
しかし恐怖よりも先に、その場を離れたいとの意志が働いた。なんとか通過したが、安全圏までは油断出来ない…。そして振り向くことはタブーであった。沈黙が長く続いた。
まず先に口を開いたのは私だった。私は今の出来事を認めたくなかった。
「今、宇宙人…だと、思わなかった?」
その質問を待っていたがごとく竪山さんは即答した。
「思った!思った!」
「とうとう逢っちゃったとか思わなかった?」
「思った!思った!」珍しく意気投合だ。2人は全く同じことを考えていた模様だ。
「でも人間でよかった。」竪山さんは言った。
…人間だったのか!?私は堅山さんに説明を求めた。
竪山さんはすれ違いざまにしっかりと“彼”を観察していたようだ。銀色のヘルメットを着用した人間が肩をすくめながら歩いていたらしい。目が光っていたのは眼鏡をかけていたということから、外灯反射説が有望だ。赤と緑に光ったのはUVカットコーティングのせいであろう。
しかしバイクも無いのに、あの不自然な姿は…。肩をすくめた妙な歩き方、直角に方向転換、それらは私たちにとって決して納得のできる行動ではなかった。何だったんだ?!
その後、帰り道はその話題で持ちきりだった。“彼”を発見した瞬間から、堅山さんは頭の中で宇宙人名を検索していたらしい。
竪山さんは言った。
「グレイにしては背が高いし、ラージノーズグレイでもないし、…、…(以後宇宙人名がかなり続く)、どちらかというとエルダータイプヒューマノイドだろうと思ったよ」
我々の話はまたくだらない方向へ移っていった。そして2人とも無事に帰宅できたのだった。
でも竪山さん、どうしてそんなに宇宙人の名前を知っているのだ…?もしや、あなたは?!
話はここで終わるはずだった。だが…。
あれから数日後、また私は竪山さん(仮名)とコアラさんの家に遊びに行っていた。楽しい時を過ごしていた私たちは、いつの間にか夜が更けていることに気づいた。さぁそろそろ帰らねば。
この話はそんな帰り道に起こった1分程度の出来事だ。
帰り道、私と堅山さんはいつものことながら、くだらない話に花を咲かせていたのだった。話はだんだんと盛り上がり、私たちは浮かれて良い気分だった。
そのときだ。私たちの楽しい会話は一瞬にして鼻から蒸発した。沈黙が私たちを襲う。2人の視線は同じものに注がれていた…。
30メートル程前方に、頭が犬の形をした人間型の生物が、直立二足歩行で歩いている。
私たちは度重なる奇怪な光景に力を失い、ブレーキもかけずに進んでいった。やはり吸い込まれるかのように…。接触してしまう…。
私は今度は勇気を振り絞ってその生物を見ることにした。もちろん竪山さんもそうした。
私たちがそこに見たものは、犬をおんぶしたおばあちゃんの姿だった。犬はおばあちゃんの背中に誇らし気に立っている。私は脱力してしまった。
「犬をおんぶするなよ〜!」竪山さんは怒っていた。犬を背負ってはいけないという規則も倫理観もないが、私は竪山さんの気持ちはよくわかった。
最後に竪山さんは呟いた。
「アヌビスがいるのかと思ったよ」(エジプトの頭が犬の神)
しかし竪山さん、どうしてそんなにいろんな名称がすぐ出てくるのだ…?
やはり、あなたは…?!
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