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俳句友達

佐々木 悦子 著

 ぶんきちおじいさんが、さんぽの とちゅ
うで、こうえんのベンチに こしをおろしま
した。
 すると、ベンチのよこの あじさいのきの
したから、ちいさな しわがれごえが きこ
えてきました。
「ボボじい、わしの つくった はいくを 
きいてくれや。
『はらへった ばんのおかずは なんだろ
な』
どうじゃ? なかなか いいじゃろが?」
 すると、べつの しわがれごえが いばっ
たように こたえました。
「だめじゃ、だめじゃ、トトじい、そんなも
のは はいくとは いえぬ。もっと、はらの
そこから、ひねりださねば、よいものは で
きん!」
 そこに、さんにんめの しわがれごえが、
わりこんできました。
「なに、なに? はらの そこから ひねり
だすとな? ふむふむ、わかったぞ、そんな
の かんたんじゃ。
『ほんとうに わしのおならは くさいの
う』
 どうじゃ、ボボじい、これなら りっぱな
はいくじゃろう!」
「ツツじい! おぬしは とんだ かんちが
いを しとるよ。こまったもんだ、ふたりと
も、まったく わかっとらん!」
 ぶんきちおじいさんが、そっと あじさい
のきのしたを のぞいてみると、そこには、
さんにんの こびとの おじいさんが、むか
いあって すわっていました。
「なら、ボボじい、てほんに なるような は
いくを ひとつ よんでみせてくれ!」
「そうじゃ、そうじゃ、きかせてくれい!」 
ボボじいとよばれた、いちばん としよりの
こびとが、いせいよく たちあがりました。
「おお、よいとも、たとえばじゃな、うーん、
たとえばじゃ、うーん、『かぜふけば…』 い
や、『かぜふいて…』」
 ボボじいは、しきりに あごひげを ひっ
ぱって、かんがえこんでいます。
 はいくを つくるのが、三どの ごはんよ
りすきな ぶんきちおじいさんは、おもわず
こえをだして しまいました。
『かぜふいて あじさいゆれる ひるさが
り』
 それをきいた、トトじいとツツじいのふた
りが、とびあがって はくしゅしました。
「ほう! これは すごい はいくだ!」
「うまいもんじゃ、なるほど、なるほど!」 
ボボじいは、きを わるくしたようすで、ぶ
んきちおじいさんを したから にらみつけ
て、いいました。
「ひとの はいくを、よこどりするとは、お
ぬし、いったい なにものじゃ?」
「いやいや、これは すまんことをした。ゆ
るしてくだされ。いや、わしも はいくを つ
くるのが、だいすきでね、つい おなかまに 
いれてもらおうかと…」
「ふん、それなら だまって、わしの てほ
んを きいておれ!」
 ボボじいは、こしに てを あてて、おも
いっきり ふんぞりかえると、
「では、やりなおしじゃ。ええと…ええと…
『せみがなく』 うーむ…『せみがなく』」 ボ
ボじいが、つまっているのをみて、また、ぶ
んきちおじいさんが、さきに つくってしま
いました。
『せみがなく こだちまぶしき なつのあ
さ』
「おお! みごとじゃのう」と、トトじい。
「いやはや、たいしたもんじゃ」と、ツツじ
い。
 ボボじいは、すっかり むくれて、
「わしが、いま、そういおうと おもってい
たのに、さきまわりして けしからん! わ
しは おこったぞ!」
 そういうと、トトじいと ツツじいをひっ
ぱって、とっとと かえってしまいました。 
そのばん、ぶんきちおじいさんは、きゅうに 
たかいねつを だしてしまいました。
 よなかに ふと めがさめると、あたまに
つめたいものが、のっています。ひんやりと
して、とても きもちが よくなりました。 
みると、こびとの ボボじいが、やつでのは
っぱをぬらして、ぶんきちおじいさんの あ
たまに のせてくれています。
『ありがとう おかげでねつが さがりま
す』
 ぶんきちおじさんは、うわごとでも はい
くに なってしまいます。
『なおったら わしのはいくを ききにこ
い』
 ボボじいも、まけずに はいくで いいか
えします。
『がんばれよ わしらのぶんきち おじいさ
ん』と、よこから トトじいが いいました。
『ねつなんか おならとともに とんでい
け』といったのは ツツじいです。
 ぶんきちおじいさんは、にっこりしながら、
うわごとを いいました。
『うれしいな なかまができて うれしい
な』
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