はこの おうち
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佐々木 悦子 著
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こがらしの ふく、まちの こうえんに、
二ひきの のらねこが すわっていました。
「ずいぶん さむくなってきたね」
まっくろな ねこが、せなかを まるめな
がら いいました。
「ほんと…、いえねこは いいわねえ、あっ
たかいとこで ねむれて…」
まっしろな ねこが、ためいきを つきな
がら、いいました。
「おれたちも、いえねこに なろうよ。おれ、
しんせつな おじいさんを、みつけたんだ。
もしかしたら、おれを かって くれるかも
しれない…」
くろねこが、いいました。
「まあ、いいわね…。あたしも、かってくれ
そうな いえを、さがしてみるわ」
そういって、しろねこは まちへ でかけ
ました。
やがて、いっけんの りっぱな いえに、
やってきました。おひさまが あたる、あた
たかそうな、ひろい にわも あります。
「こんな うちで かってもらえたら、しあ
わせに なれるわ、きっと…」
しろねこは、げんかんの まえに すわる
と、おおきなこえで なきました。
「ミャーオ、ミャーオ、ミュー、ミュー」
とびらが あいて、おばあさんが、かおを
だしました。
「おや、ねこだ…。ねずみたいじに いっぴ
きほしいと おもっていたんだ」
そういって、おばあさんは しろねこを
いえに いれてくれました。
「なんて、うんが いいんでしょう!」
しろねこは、おおよろこびでした。
ところが、この おばあさん、とっても
けちで いじわるな ひとでした。
「おまえには ごはんは ちょっぴりしか
やらないよ。はらが へったら、ねずみを
おとり!」
「いえの なかを はしりまわって よごし
たら、しょうちしないよ!」
「にわに、でては いけないよ。にわは な
がめるための ものだからね」
しろねこは、いえの なかに とじこめら
れてしまいました。
そして、おなかを すかしながら、だいど
ころの どまで、ねむらなければ なりませ
んでした。
(こんなことなら、どんなに さむくても、
くろねこさんと いっしょに、こうえんに
いたほうが、ずっと よかったわ…)
あるひ、しろねこは、おばあさんが げん
かんの とびらを あけたとたん、パッと
そとに とびだしました。
そとは つめたい あめが、ふっています。
しろねこは、いちもくさんに、こうえんに
はしっていきました。でも、くろねこの す
がたは ありません。
こうえんの すみに、みたことのない お
おきな はこが ありました。
しろねこが そっと ちかづいてみると、
なかから ひげづらの おじさんが かおを
だしました。
「やあ、やあ、ねこちゃん! わたしのうち
に おはいりよ」
それは、ダンボールで できた、はこの
おうちでした。
「いっしょに、ごはんをたべようね」
おじさんが、いわしの かんづめを あけ
ながら、いいました。
ごはんが おわると、おじさんは、しろね
こを ふところに いれて なでながら い
いました。
「きょうは あめふりだから、しごとは や
すみだ。ふたりで のんびり ねようよ…」
こうして、しろねこは、ひげの おじさん
と、はこの おうちで くらすことに なり
ました。
あるひ、おじさんが しごとから かえっ
てくると、うれしそうに いいました。
「きょうは きゅうりょうびなんだ。おまえ
にも ごちそうするよ」
そして、まちの はずれにある やきとり
やへ いっしょに いきました。
やきとりやの やたいの したに、ちいさ
な ダンボールの はこが、ありました。
しろねこが のぞきこむと、かおを だし
たのは、なかよしだった くろねこでした。
「あれっ! ここに いたの?」
しろねこが びっくりして いいました。
「うん、この はこの うちを、やきとりや
の おじいさんが、つくって くれたんだ」
くろねこは やわらかな もうふに くる
まって、うれしそうに いいました。
「あたしも この ひげの おじさんと い
っしょに、はこの おうちで くらしてるの
よ! とっても しあわせなの!」
しろねこと くろねこは、のどを ごろご
ろ ならして、よろこびあいました。
「はこの おうちって、あたたかいね!」
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